
FXで損切りが重要とされる理由
FXを行う上で必ずといっていいほど身につけなければいけないのが「損切り」になります。FX経験者であれば、その重要性を理解しているかと思いますが、“理解している”と“実行できる”は似て非なるものになります。潤沢な資金を運用している場合であれば、ポジションが損失に傾いたとしても損切りすることなく保有し続ける事ができるかもしれませんが、多くの場合その限りではありません。ましてや“個人投資家”というカテゴリーに属している大半の人は限られた資金での運用となるので、ポジションが損失に傾いた際に“そのまま保有する”ということは損失を膨らませることに繋がるのであり、自らロスカットへの時間を短縮している行為といえるのではないでしょうか。
しかし、その中でもポジションを保有し続けることによってマイナスからプラスへ転じる局面もでてきます。損切りを選択しなかった事によってマイナスどころかプラスで決済する事ができれば、多くの人はその結果に味を占めて、それ以降のポジションについても同様の行動をとるようになります。しかし、問題はここにあるのです。FXで自分のエントリーする方向、すなわち予測するチャートの動きとは違った動きをした場合は、一度決済して戦略を立て直すのがFXの基本となりますが、その基本を無視してポジションを保有し続けても、それは長い目で考えた時に有益には働かないといえます。なぜなら、これは、相場の状況を理解していないので単なる“運”や“奇跡”に近いものとなり、結果的にギャンブル性が高くなってしまっているからです。
戦略を立てなければ方向性を見失う
FXでエントリーする際は、その前段階で戦略を立てた上でポジションを保有すべきです。戦略というのは、今後予想されるチャートの動きを事前に予想して、その動きに対してどのような行動をとっていくのか、という部分を明確にすることになります。しかし、ポジションを保有して、そのポジションが損失に傾いた際に「損切り」が出来ない場合は、戦略通りの行動ができていない、と判断できます。そもそもエントリーする段階で、損切り設定をしていなければ、その議論さえすることができませんが、設定しているにもかかわらず、損切りを実行出来ていない場合はFXが“運任せ”になっているので、ギャンブルと同じであるといえます。戦略通りの行動することができて初めてその戦略が意味を成しますが、行動することができなければその意味合いも薄いものとなってしまいます。
ただ、「それなら戦略はいらないか?」と聞かれればその答えは「No」となるでしょう。何故なら、戦略を立てることによってある程度のチャートの動きを予想する事ができているので、あとはその戦略の精度や行動力の問題になるからです。仮に戦略を立てていないのであれば、自分の立ち位置や方向性、それに戦略の精度についても把握することができないので、「戦略を立てない」という事は海図を持たない航海をしているのと同じ意味になるのです。例えば、ダイエットを決意した際に多くの人は計画を立てることになるかと思います。どのくらいの期間で何キロ痩せるか? 何を取り入れて痩せるか? どの部分が痩せたいか?…など。そこに、事細かに計画を決め込む場合と大枠だけを決め込む場合の違いこそ存在しますが、計画があるとないとでは大きな違いがある事だけは理解できるかと思います。FXも同じ事で、戦略を立てる事をしなければ計画の点検やその後の改善に繋げる事が出来なくなってしまうことになってしまうのです。
損切りが続いた時の対処法
FXでは「損切り」が重要であることを理解して、実際に「損切り」という行動に移す事が出来たとしても、“結果が必ずしもプラスで終わるわけではない”という事を理解しなければなりません。FXにおいて損切りする事は重要ですが、あくまで損切りというのは損失が膨らむ前段階での決済を目的としています。要は資産が減少するスピードを緩やかにする、戦略の立て直し、といった意味合いになるのです。ただ、“戦略の立て直し”をすることによって、次のエントリーが利益で終わる事もあるので、一概に損切りが利益に繋がらないわけでもないのです。
ここで「損切り」をもう少し掘り下げてみると、“損切り自体はできているものの損切りが連続してしまう”という問題を抱えているケースが多いといえます。損切りが続くとメンタルコントロールが難しくなり、次第に含み損を抱えても損切りするのを辞めてしまいます。損切りする事がなければ損失を確定する事もないので、「ポジションを保有し続けて再びプラス圏に戻ってくるのを待った方が得策」と考えてしまいがちになります。しかし、これまでの話しの中で損切りの重要性を幾度も説明しているので、こうした行動を取らない事を願いますが、損切り続きでメンタルコントロールができていない状況であれば理解できないわけでもありません。そこで意識して欲しい事がいくつかあります。
損切り幅が狭すぎる
損切りが連続している人の中でも多いのが「損切り幅が狭すぎる」ということです。これは、損切りや損失に対しての恐怖心が原因になりますが、FXの理想である“損小利大トレード”という視点から考えたら問題ありません。しかし、「損を出したくない」、「損失を増やしたくない」という感情が相場に移入してしまっているので、客観的な判断ができなくなってしまっているのです。従って、“エントリー戦略に対しての損切り設定”というよりも“自分が損失を許容できる範囲での損切り設定”となっているので、すぐに損切りとなってしまっている可能性があります。相場を中心として考えているのではなく、自分が中心として考えているので、必然的に損切り設定が狭くなってしまい、エントリーして時間が経たないうちに損切りとなってしまっているのです。これが続くと、エントリーすること自体に自信を持つ事ができなくなって、損切りができなくなったり、エントリーが怖くてできなくなったり、といった事になりかねないので注意が必要となります。
エントリータイミングのミス
FXはいってしまえば上がるか、下がるか、のどちらか一方になります。確率論でいえば50%の確率で勝つか負けるかになりますが、「損切りが続く」というと負けが連続していることになります。その場合、根本的なエントリー方向や戦略自体に問題があるケースが多く、こうした部分の見直しや改善ができなければ利益を出す事は難しくなってしまいます。いくら損切りする事ができたとしても、トレンド方向とは逆にエントリーいるのであれば損切りが続いてしまいます。仮にポジション保有している中で一時的に利益が出たとしても時間の経過とともにすぐに損失・損切りへと転換してしまうでしょう。しっかりと損切りができているのにもかかわらず、損切り回数が多い場合はエントリータイミングや戦略自体に問題がある場合が多いので、自分のルールや戦略を見直してみましょう。ただし、FXでは“相場から退場しない“ということが大切であり、その中でも「損切り」は重要な位置付けとなります。損切りが続くとメンタル面にも影響を与えますが、決して損切り自体が悪い事ではない事を十分に理解して下さい。損切りする事が出来なくて資産を失った人も多いのですから。