
FXの売買には様々な注文方法が準備されています。状況に応じて、あるいは自分に合った注文方法で取引することにより、利益を伸ばしたり、損失を少なくしたりすることができます。FX会社により、独自の注文方法を準備しているケースもありますが、今回は、多くのFX会社で用いられている標準的な注文方法について、その特徴や注意点を含めてお話ししていきます。なお、FX会社により同じ注文方法でも独自のネーミングを行っている場合もあります。
その時の価格で売買行う「成り行き注文」
成り行き注文とは、その時点の価格で売買を行う注文方法です。FXの取引画面を見ていると、例えば米ドル円の画面で、買い(Ask)が110.01円、売り(Bit)が110.00円などと表示されており、瞬間的に変動しています。これが現在の価格を表しており、この価格で買いエントリーや売りエントリーを行い、またポジションを持っている場合にはこの価格で買い決済や売り決済を行うのが成り行き注文です。
ところで、インターネット上とはいえFX会社に注文が届くまで少しは時間差があります。
こちらから注文した時点(注文ボタンを押した時点)は価格が110.00円であっても、その注文がFX会社に届いた時には価格が110.01円に変化しているかもしれません。これをスリップまたはスリッページと言います。そうすると、売買は不成立になってしまい、ポジションを持つことができません。これを防止するのが許容スリップと呼ばれる設定で、注文をした価格と、どれぐらい離れても注文を成立させていいかを指定できるのです。
例えば、米ドル円で110.00円で成り行きの買い注文を行い、許容スリプを0.01円としていた場合には、110.01円まで成立させることができます。この許容スリップの設定を小さくすると売買は成立しにくくなりますし、大きくすると、売買は成立しやすくなります。しかし、許容スリップを大きく取り過ぎると思っていた価格とかけ離れて約定してしまい、結局は損をしてしまうということにもなりかねません。
では、どれぐらいの許容スリップを設定しておけばいいのでしょうか。私の場合ですが、余り動きの激しくない状況ではスリップする確率が低いので、0~1pips以内で設定しています。経済指標の発表直後など、動きが激しいときには、予定決済価格まで随分と価格差がある場合には3~7pips、予定決済価格まで余り価格差がない場合には3pips以内にしています。FXで勝つ秘訣は損をしないことですので、私は損をするリスクを避け、「取引をしないならしないでいいか」というような感じで設定しています。
あらかじめ価格を指定して売買する「指値」と「逆指値」
指値、逆指値は、価格が現在の価格ではなく、指定価格に達した時にエントリーや決済を行うという注文です。例えば、米ドル円の現在の価格が110円であるときに、109円まで米ドルが下がったら米ドルを買うと予約をすることや、現在持っている米ドル円の買いポジションが112円まで上昇したら売り決済を行うという予約をすることができるのです。そうすると、モニターでチャートとにらめっこをしていなくても、取引を行うことができますね。
ここで、指値と逆指値の使い分けについて説明します。逆指値は損切の時にのみ使うものと間違って解釈されている方も見受けられますので、正確に理解して更に便利な使い方をしましょう。先ず、指値とは、現時点の価格より、有利な売買取引価格の指定を行う注文です。例えば、米ドル円が現在110円だったとします。今この価格で買うより、109円で購入した方が有利な価格になります。この場合、109円に買いの予約注文を入れるのに使うのが指値です。また、米ドル円を現在110円で持っていたとします。これを111円で売るのは有利な取引になります。この場合、111円に売り決済の予約注文を入れるのに使うのも指値です。
逆指値とは、現時点の価格より不利な売買取引価格の指定を行う注文です。例えば、米ドル円の買いポジションを111円で持っていたとします。現在、110円なのですが、109円まで下がったら諦めて売り決済で損切しようと思ったとします。現在価格の110円で売り決済をしてしまえば損失は1円でいいのですが、更に値下がりして109円で売り決済をすれば損失は2円となって、今決済するより不利なトレードになりますね。この109円という今より不利な価格で決済注文をするときに使うのが逆指値です。また、現在の米ドル円の価格が110円だったとします。これが111円になったら買いエントリーしようと思ったとします。現在の110円で買うより、111円で買う方が価格的に見れば不利なエントリーになりますね。この買いエントリー予約に使うのも逆指値です。
では実際、今より高い価格で買いエントリーの注文を逆指値で入れたり、今より安い価格で売りエントリーの注文を逆指値で入れたりすることがあるのでしょうか。それよりも、今の価格ですぐに買いエントリーや売りエントリーをした方がいいのではないでしょうか。確かに、価格にのみ着目すればその通りです。安く買って高く売る、高く売って安く買い戻すというのが相場の基本形です。
しかし、これにサポートやレジスタンスの考え方を加えていくと、必ずしもそうとは限りません。相場は、価格がレジスタンスを一旦上抜けるとそこから更に上昇し、また価格がサポートを一旦下抜けるとそこから更に下落することがあります。そのような現象を考えると、レジスタンスを上抜けると上昇が続くことを見越してレジスタンスの上の価格に買い注文を入れることや、サポートを下抜けると下降が続くことを見越してサポートの下に売り注文を入れることはよくあることなのです。このようなエントリーは全て今売買するよりも不利な価格でエントリーをすることから逆指値で予約を入れるのです。
ここで、指値注文や逆指値注文について重要な注意を1つ申し上げておきます。それは、指値注文、逆指値注文は、スリップが無い代わりに、その価格でしか約定しないということです。相場では、価格が連続に推移するのではなく、飛んでしまうことがあります。例えば、週末から月曜の朝に生じる窓空きと呼ばれる現象や、経済指標で激しく価格が動く場合です。この場合には、指値、逆指値でエントリー価格や決済価格を指定していても、その価格そのものにならないので、約定しないことになります。
私の経験ですが、買いポジションを持っていて米国の雇用統計に臨んだときですが、指値で売りの決済ポイントを置いていたにもかかわらず、私の想定した上昇より遥かに強い上昇になって指値の価格を飛び越してしまい、随分と上昇して成り行き注文で決済したことがあります。このときは、想定以上に利益を得られましたが、逆指値で損切の決済を行おうとしているときに同様のことが生じたとしたらと思うと、ぞっとしました。もっとも、これが原則であって、FX会社によっては好意的に決済を行ってくれる場合もあるようです。しかし、指値や逆指値にはそのようなリスクもあることを理解しておいてください。
2つの注文が同時に指定できる「OCO注文」
OCOとは、“One Cancel Other”の略で、同時に2つの注文を出し、一方の注文が成立すると他方の注文が取り消される注文方法です。新規の注文でも、現在持っているポジションにも適用することができます。新規の注文では、例えば、レジスタンスとサポートがあり、レジスタンスを上抜ければ上昇、サポートを下抜ければ下落が予想できた場合、レジスタンスの上に逆指値で買い注文を、サポートの下に逆指値で売り注文を入れることができます。そして、どちらか一方のエントリーが成立すると、もう一方の注文はキャンセルになるので成立しなかった注文の影響は全く受けません。また、ポジションを持っている場合には、利益確定の指値注文をと損切の逆指値注文を同時に入れることができます。
「IFD注文」と「IFO注文」
IFDとは、“If Done”の略で、新規の注文とそれに付随する注文1つを同時に出すことができる注文方法です。例えば、新規注文と利益確定の指値決済、新規注文と損切の逆指値決済を同時に注文するという形で使用します。新規注文が約定した場合のみ、もう1つの注文が発動します。尚、新規注文の約定後、指値注文や逆指値注文の価格を変更したり、取り消すこともできます。
IFO注文は、IFD注文とOCO注文を合せたような新規の注文方法で、新規の注文とそれに付随する注文2つを同時に出すことができる注文方法です。具体的には、新規注文と、利益確定のための指値注文と損切のための逆指値注文を同時に注文するときに使用します。なお、新規注文の約定後、指値注文や逆指値注文の価格を変更したり、取り消すこともできます。
価格に追随して逆指値で決済する「トレール注文」
トレール注文は、価格に追随して逆指値で決済を行う注文方法です。トレール注文では、現在の価格からどれぐらい価格が逆行したら(買いエントリーの場合は値下がりしたら、売りエントリーの場合は値上がりしたら)決済するかという値幅(トレール幅)を決めます。到達価格からの価格の逆行が、その値幅に到達した時に決済されるという仕組みになっています。あくまで設定は絶対的な価格ではなく値幅になっているところがミソです。
例えば、買いエントリーでトレール幅を100pipsに設定したとします。トレールを設定してから1度も高値を更新せずに下落をしたら、100pips価格が低下した時に決済されます。すなわち、100pipsの損失を被ります。しかし、1度価格が50pips上昇してから下落に転じたら、この50pips上昇したピークの価格から100pips低下した価格で決済するので、損失は50pipsになります。価格が一旦上昇した分だけ、損失が少なくなるのです。
一方、トレールは利益確定にも使用することができます。例えば、相場が上昇トレンド局面で、価格がどんどん上昇を続けていくと予想できたとき、しかしどこまで上昇するかわからない場合にこのトレール注文を使って決済すると、到達した価格のピークの値からトレール幅分低下したところで決済されるので、場合によってはピークに近い所での決済ができることになります。もっとも、トレール幅を余り小さくすると相場の小さな上下動に引っかかって決済されてしまいます。逆に、トレール幅を大きく取り過ぎると、価格のピークから随分と下がったところで決済されるので、利益が少なくなります。どの程度のトレール幅が適切かは、相場状況にも左右されるので、なかなか難しいところでですね。